説明
梶井宮最胤法親王 かじいのみや さいいん ほっしんのう
1563-1639
梶井門跡。伏見宮邦輔親王第八王子、正親町天皇猶子。俗名惟常(これつね)。梶井宮応胤法親王に従って台教を学び、第169代天台座主となり、二品に叙せられます。
梶井門跡とは京都市左京区大原にある三千院の別称で、天正3年に親王となったのち、同年に出家しました。慶長17年に天台座主になり、その後28年間その任にあたりました。
その最胤法親王による和歌で「早涼刻」「行路萩」「岡中灯」の3つの題でそれぞれ2首ずつ秋をテーマに詠まれております。それぞれ片方の歌に合点がついており、また、ところどころに代案となる言葉が記されているのが興味深い部分です。例えば「袖よりうつる」ではなく「袖にもわたり」であったり、「おりいたす」が仮名遣いが違い「をりいたす」であるなど。極札が付属しており、正親町天皇の御加筆とございます。とすると、この和歌が書かれたのは天正年間前後と推察されます。
早涼刻
朝夕に すヽしさならす 松かげの
袖よりうつる 秋のはつかぜ
萩の葉も まだほりぬ思 秋風を
ならす扇の まつぞことはる
行路萩
ゆく袖と ちがふるばかり うすくこく
咲かしみだるる 露の萩原
古郷に きてやかへらん 色ヽに
おりいたす野の 萩の錦を
岡中灯
世の外と かくれすみかの 窓もなを
すきまあらはす はいの灯
とふ人も まれなる窓は 灯の
ひかりやその 友となるらん
※多少の誤読はご容赦くださいませ。